vol. 8 discommunication

なんだか最近冴羽さんの様子が変だ。Cat'sに来てもため息ばかり。まるで香さんのようだ。
いつも笑顔な香さんだが、ときおりコーヒーを飲んでは、はぁっ、とため息を漏らす。
マスターの入れるコーヒーにはきっと心の重荷を下ろしたくなるような作用が含まれているに違いない。
その心の重荷は「撩が仕事しない」から「撩が振り向いてくれない」まで多岐にわたるが、ほとんどが冴羽さん絡みだ。
ということは冴羽さんのため息の理由もおそらく香さん絡みだろう。
ああ、なんか妬けちゃうなぁ。でも、それにしてもここ最近のいきなりの変わりようは不自然だけど。

「・・・っはぁ」

ほら、またため息ついた。

「そんなに迷ってるんなら『当たって砕けろ』ですよ、冴羽さん。
やらない後悔よりやった後悔、女の子ってのは大抵押しに弱いんですからっ」

ああ、なんでわざわざ自分で自分を追い込んでるんだろう。
でも、他人に言われるより自分で言ったほうがまだまし。それに、あの二人がはっきりしてくれないことには
あたしだって諦めようがないもの。

「そんなんじゃねぇよ」
とそっけなく、まるでまとわりつくハエを追い払うかのように言われてしまった。

「そういえば最近冴子さんの様子も変なのよね。
なんていうか元気がないっていうか、冴羽さんみたいにため息ばかりついちゃって」
とママが声をかけた。
え、冴子さんも?ここであたしの頭が直感的にはじき出した結論は――。

「ちょっと、かすみちゃん、どこ行くの!?」

ママの制止を振り切って、あたしは店を飛び出した。といっても行く当ては別にないんだけど・・・
でも、ただでさえあの二人の間に割って入れっこないのに、これ以上強力なライバルが登場してなるもんですかっ。

 

 

伝言板には相変わらず何もなかった。これは憂うべき事態のはずだけど、心のどこかでほっとしていた。
今こんな状況じゃとてもじゃないけど依頼を誠実にこなしていく自信はない。
ただでさえ、あたしの頭は撩と冴子さんという思いもよらなかった、しかしありえたかもしれない可能性にてんてこ舞いなのだ。
その上、何の予告もなしにアニキが現れて・・・すでに頭の回転の限界値は振り切っていた。

あの夜会ったアニキは間違いなくアニキだった。
なのにあたしの知らない服を着て、あたしの知らない言葉でしゃべっていた。まるで赤の他人のように。
生きているとは、この街にいるとは聞かされていた。
でも、それ以上のことを何一つ知らされていないことをあのときまざまざと思い知らされた。

それもこれも総てあたしのため、あたしを危険に巻き込まないため。パートナーのことを疑っているわけじゃない。
でも、撩にとってあたしは秘密を共有しあえるような関係じゃないのだ。
あたしが知っている真実というのは所詮オブラートにくるまれた口当たりのいいものばかり、
裏の世界の現実はあまりにも刺激が強すぎるから。
でも、あたしはシティーハンターの、撩のパートナー。
いつまでも撩に守られてばかりじゃ対等なパートナーになれやしない――。

「カオリ?」

丸めた背中に声が掛かる。

「ああ、やっぱりカオリだ。一体どうしたんだい、そんなブルーな顔しちゃって」
「ミック・・・」
「またリョウのことかい」
「ええ・・・」

当たらずとも遠からず、といったところだ。

「まったく、あのson of a “b”は相変わらず女の尻追いかけてるんだろ。こんな可愛いパートナーがいながら」

いつもだったら冗談半分のミックの台詞も今日ばかりは冗談にもならなさそうだ。
余計気分が重くなる、ミックには悪気はないと知りつつも。

「カオリ?」

心配そうに青い瞳が覗き込んだ。

「そうだ、確かこの近くにアップルパイの美味しいカフェがあるんだけど、一緒にどうだい?
疲れたときは甘いものが一番。特に女の子のハートには、ね」

ミックの優しさは多少割り引いて考えなくちゃいけないけど
心が滅入っているときはそんな優しさにほだされてしまいたくなる。
このままCat'sに寄ろうかと思ったけど、ミックのお誘いに乗ってみることにした。

 

 

思ったとおりだ。やっぱりカオリはブルーだった。
さっきのリョウの態度から彼女が落ち込んでいるであろうことは予想していたが
それにしても、あれほどまでにがっくり来ていたとは・・・。
普段はどんなに辛いことがあっても涙をいつもの太陽のようなスマイルで隠してしまうカオリの表情も
今日はどんよりとした雲に覆われていた。

「Ryo, do you mind? (リョウ、邪魔するぜ)」
「香なら留守だぞ、さっき伝言板見に行った」
「不本意ながら今日はお前に用がある」

こう言われてリョウはのっそりとソファから身をもたげた。手元には相変わらずのgirlie magazineだが。

「言ったのか、サエコからの依頼のことを」
「香にか?あいつは今回関わらせるつもりはない」
「Why!これはお前やサエコだけの問題じゃない、カオリ自身の問題でもあるんだぞ!」
「香自身の問題、か。美樹ちゃんにも同じようなことを言われたな」

そうヤツは自嘲気味に笑った。

「なのにお前ときたらカオリは放ったらかしで・・・お前の前でこそ平気そうに振舞ってるけどな
一人のときはどれだけ思い悩んでるか判ってるのか?」
「じゃあお前はその思い悩んでる香とやらをこの目で見たのかよ」

そんなのは簡単に想像つくさ。

「それにしてもこの家じゃ客にコーヒーも出さないのか?」
「うるせー!テメェに出すには豆が勿体ねぇんだよっ」

そして視線をプレイメイツに戻すと独り言のようにこう言った。

「――香は一人でも大丈夫だ」
「リョウ、お前その意味判ってんのか?」

一人でも大丈夫、これは女性にとっては最大の禁句だ。地雷と言ってもいい。
それをこともあろうに最愛(と認めないのは当人ばかりだが)のパートナーに言うとは――。

「あいつはああ見えて打たれ強い。今まで何度も壁にぶち当たってきてはそれを乗り越えてきた。
しかし冴子は違う。彼女は槇村のことを除けば壁らしい壁にぶち当たったことはない。免疫が無いんだ。
一見ああいうのが実は脆いんだよ、女ってやつは」

そう言うリョウの横顔は恋人を語る、という風でもなかったが、決して友人について語っているような表情でもなかった。
なぁリョウ、お前がそう言うsuspendedな態度をとっているなら、泣く泣く身を引いたオレの立場は一体どうなるんだ?

「そこまで言うんならオレがカオリをどうしようといいんだな?」
「お前こそ・・・」
「What?」
「いや、なんでもない」

そこまで言って口をつぐんだリョウの態度がやけに気になった。

 

 

総監室まで呼び出されるときは十中八九私用だった。
いくらキャリアでも一介の管理官に警視庁トップ直々のお叱りが飛ぶことはまず無い。
せいぜいが課長か部長からの叱責で事が足りる。
だからわざわざ総監がお呼びということは、ほとんどが見合い話か妹たちの愚痴だ。
公私混同は避けろと言いつつも、一番混同しているのは総監――我が父ではないか。
それも今回は、わざわざ所轄から呼び出して。

「で、何の用ですか?お父様」
「ここでは総監と呼べと言っただろう!」

よく言うわ。ここに呼び出したのは父親としてだというのに。

「朝倉君のことについてだが――」

来た。

「プロポーズの返事を保留したというのはどういうことだ?何か、結婚を先延ばししたい事情があるのか?」
「いえ・・・」
「今回の話はお前にも済まないと思っている。今までと違って断ろうにも断れん話だからな。
だが、そんなに嫌なら私のことなど気にする必要はない。嫌なら嫌と言ってやれ」
「いいえ・・・個人的な感情ではありませんわ。
ただ、朝倉参事官から今度の『シンセミーリャ』対策会議にオブザーバーとして招かれました・・・
だから、その責任者とメンバーが個人的関係にあっては不適切かと。
返事はその件が片づき次第お受けいたします」
「そうか・・・槇村君、のことじゃないんだな」

まさか、父の口から彼の名が出るとは思わなかった。

「何で・・・」
「父親として、娘のパートナーのことぐらい耳に入っていたさ。あれはよく切れる男だと聞いていたからな」

そう言って父は背を向けて外の緑を見下ろしていた。
今まで私は父を父としてしか見ていなかった。たとえ職場でも。
しかしこれでも――親バカで短絡思考で娘たちに振り回されてばかりの親父殿でも
警視庁のトップにまで上り詰めたエリートだ。その背中が今までより大きく見えた。

 

 

ノックの音が聞こえたので、やりかけだった作業を中断してデスクの上にある物をしまおうとした。

「コルト・ローマンMkIIIか、結構古い銃を使ってるじゃないか」

しかし訪れた客人は手の中の物を見つけてしまった。

「そうか?」
「もう生産中止になった銃だろう?もう少しいいものがあるんじゃないのか」
「いや、これが一番手にしっくり来る」

そうか、と彼が言った。

「セニョール、コーヒーが入りました」

その声に彼は飛びついた、瞬時に顔を緩ませて。

「おお、もっこりボニータちゃん!写真で見るより実物の方がかわいいわぁ」
「あの・・・」
「大丈夫、ボクが君を籠の中から飛び立たせてあげよう。だから、そのあとは二人でめくるめく愛の世界へ――」

次の瞬間、彼の鳩尾に強烈なエルボーが入った。トレーの上のコーヒーはこぼれていない、見事なバランス感覚。
しかし、その光景にまたもや強烈なデジャ・ヴを覚えた。
倒れてひくついている客人をよそに、彼女がコーヒーを置く。そして、部屋から下がるように目配せをした。

「で、計画としてはどうなんだ?」

彼女が部屋を出るのを見計らって、冴羽撩は起き上がった。

「今度大きな取引がある。おそらく妨害を退けるため警護に結構な人数を裂くだろう。ここも手薄になる」
「その隙に彼女を救い出す、のか」
「だが問題なのはその先だ。シンセミーリャは世界中にネットワークを持っている。
彼女を抜け出させたところで逃げ切れるか――」
「それなら案がある。
東京から少し離れたとこだが、海坊主の山小屋がある。そこに彼女をしばらく置いておく。
奴らとしては日本に何のゆかりもない娘がこっちに留まっているとは思わないだろう。
そこでしばらくほとぼりの冷めるまで過ごせばいい。
あわよくば、その隙にシンセミーリャが壊滅しているかもしれない」

計画に抜かりはなかった。これなら彼女を自由にできる、私はそう確信した。そのとき、
「ルームサービスです」
「いや、私は頼んだ覚えなどないが――」

だが、ボーイはトレーの上の銀の覆いを取ろうとした。だが、

「伏せろ!」

冴羽は私の頭をデスクに押さえ込んだ。
その上を銃弾が飛ぶ。
偽ボーイが覆いに隠していたのは小型マシンガン・マイクロウージー。
撩も銃を取り出す。コルト・パイソン357マグナム。
その銃弾がマシンガンを吹き飛ばした。
が、更なる足音がこの部屋へと近づく。
そして、ドアを勢いよく開けると再び銃弾の雨が降り注いだ。
着弾を避けて私も彼も床を転がる。

「これがあんたの言う妨害ってやつか?」
「ああ、日本のヤクザは我々のことを快く思ってないんでな」
「にしちゃあ遣り口が手荒すぎる」

撩は弾切れらしく、ソファの陰でシリンダーに詰めなおしていた。
その間も銃撃は止まない。
デスクの陰に隠れていた私は手探りで机上に手を伸ばす。
冷たい手ごたえにそれを掴むと、襲撃者の一人に向かって投げつけた。
ペーパーナイフは刃先は鈍いが、加速がつけば人の肉に突き刺さる。
その切っ先は奴の右手に刺さっていた。

「ぐぉっ!」

撩もまたマグナムで奴らの銃を弾き飛ばす。
銃声が止んだ。

「これで全部か?」
「・・・みたいだな」
「なぁフェルナンド、本当にこれがヤクザの仕業だと思うのか」
「さぁな、他の組織の連中かもしれないし、我々には他にも敵はいる」

にしてもずいぶん派手にやりあったようだ。
エグゼクティヴスイートの壁は穴だらけ、窓ガラスもあちこちひびが入っていた。

「じゃあ、面倒なことにならないうちに退散するわ」

そう言うと冴羽は軽く手を上げて部屋を出て行こうとした。だが、彼がドアを開ける前に勝手に開いた。
入れ違いになるように入ってきたのは野上冴子だった。

「おやまぁ、ずいぶんといいタイミングで入ってくること」
「・・・一体何があったのよ」
「後のことはよろしく頼まぁ」
「ちょっと、撩!」
と日本語で何やらやりとりして、彼の方はさっさとずらかったようだ。

「フェルナンド、そういうことだから手短に頼むわ」
「ああ。今週の金曜、場所は歌舞伎町のディスコ『エルドラド』のVIPルームだ」
「判ったわ。それで、いいの?我々は現場を抑えてあなたたちを逮捕するのよ」
「・・・構わないさ。それでミランダを救い出せるなら」

そう・・・、と小さく呟いて彼女は目を伏せた。
だが、日本の警察は優秀だ。あの銃撃戦を聞きつけて110番通報がされていたらしい。
次々に駆けつける警察官の前で、彼女は署長らしく胸を張って陣頭指揮をしていた。私とは目を合わせることなく。

 

 

「ごめんなさい、結局ご馳走になっちゃって」
「Don’t worry. デートの支払いは男のほうが持つもんだろ?」
「デ、デートだなんて・・・」

とはいうものの、冴羽商事の経営状態まで引き合いに出されたらおごってもらえるほうがありがたい。
なのでミックの言葉に甘えてしまった。

「でも意外ね、ミックが甘いもの好きだなんて。撩なんて全然ダメなのに」
「アイツは小さいころの免疫がないだけなのさ。
オレだけじゃなくアメリカ人にとってはアップルパイといえばママの味だからね。だから誰でも一家言ある。
この店はカズエから聞いたんだけど、男一人で入るのはどうも、ね」
「ふふっ、そこであたしが都合よく現れたってわけだ」
「I appreciate your kindness(あなたのご親切に感謝いたします)」
と大げさに一礼した。

「これで少しはカオリの憂鬱も吹き飛べばよかったんだけど」
「憂鬱だなんて、そんな大げさなものじゃないわ」
「でも、あのときのキミの顔、とても辛そうだったから・・・」

撩との関係に不満がない、といえば嘘になる。でも平穏な毎日ならばそんなことは忘れていられる。
だけど、関係がぎくしゃくし出した途端に不満が顔を出す。
いざというとき、あたしは撩にとって命を預けうる相棒なのか、そしてあたしにとって撩は――。
そして嵐が過ぎ去れば、また不満を隠したままの日常が動き出す。
それは想いを確かめ合う前も、確かめ合ってからも変わらなかった。

「――カオリ?」

ミックの手袋に覆われたやわらかい指先が、そっと口元に触れた。

「Sorry,さっきのパイのリンゴがついていたから」

その感触はあたしにとってあのときのことを思い出させるのに充分だった。
ミックが飛行機に乗る前に交わした別れのキス
頬に触れただけといったが、あのとき、目の前の撩を挑発するように口元ぎりぎりに触れた口唇・・・。

「カオリ、what happened?」

そのときあたしの顔は、まるでリンゴのように真っ赤になっていただろう。
でもそれは、もう一つの苦い記憶も連れてきた。

――好きだぜぇ・・・冴子ぉ。

まだ想い出と呼ぶには生々しすぎるあの感触、そしてあの胸の痛み。

――君とパートナーを組みたい。
――愛してる。

あのときそう言ってくれた。その気持ちが今も変わっていないのなら・・・でも今の彼にはかずえさんがいる。
だけど、こんな不安でたまらないときは誰かにすがりつきたくなってしまう。撩以外の誰かに――。

ふっ、と第六感が何かを捉えた。
まだまだ撩に相応しいパートナーとはいえないまでも
今まで攫われたり痛い目に会わされたりして磨いてきた勘だ、
それなりに自信は持っている。

「ミック」
「ああ、モテる男はつらいね」

彼のプロとしての直感も何かを感じ取ったようだ。
歩速を上げた。彼らもついて来る、間違いない。

「武器を持ってるかもしれない」

ミックがそう言った。なら、人込みで抜かせるわけにはいかない。

「こっちよ!」

あたしは彼の腕を引っ張った。
同時にバッグの中を探る。中にはコルト・ローマン、撩から手渡されたパートナーの証。
路地に引き込んだら賊は撃ってきた。
銃弾が耳元を掠める。
ミックが前に出る、あたしを庇おうとして。

「下がって!」
「カオリ!」

ローマンを構えた。

「今のあなたは自分の身を守れてもあたしまでは守れない。でもあたしならあなたを守れる」
「でもカオリ、キミの身は誰が――」
「これでもシティーハンターよ!」

銃爪を引く。
最近は撩にもコーチしてもらえるようになって腕は上がったと思う。
さすがにあいつのように銃だけを弾き飛ばすような芸当は無理だけど
それなりに動いている敵の急所を外せるまでにはなったはずだ。
奴らの肩に、脚に血の花が咲く。

「狙いはあたし?それともミック?いったい誰に命令されたの?
今のあなたたちが相手なら急所を外さないわよ」

賊の腕前は思ったほどではなさそうだ。

「ミ・・・ミック・エンジェルを始末しろと・・・」
「誰に?」
「・・・・・」
「ならいいわ、下がって伝えることね。
ミック・エンジェルにはシティーハンターがついてるって」

奴等は傷口を抑えながら銃の照準から消えていった。

「カオリ、その腕――」

緊張が解けた途端、右腕に痛みが走った。銃弾がかすったらしい。
ミックがポケットチーフを傷口に巻きつけた。

「お願い・・・撩には言わないで・・・」
「カオリ・・・」
「さあ、かずえさんのところに」

そのときミックはビルの屋上を見上げていた。

 

 

廊下を大股で早足で、まるで床板を踏み抜きそうな勢いで彼は突進していった。

「香が撃たれたって!?」

そう冴羽さんは診察室のドアを勢いよく開けた。

「ただのかすり傷よ」
と香さんは言ったが、右腕の包帯に滲んだ紅は彼を逆上させるのに充分だった。

「ミック、お前は自分が狙われてるって自覚はあるのか!」

彼女をここまで運んできたミックを締め上げる。

「お前がユニオンの残党になんて首を突っ込むから、かずえくんを心配させるだけじゃなく香まで・・・!」
「やめて冴羽さん!」

私は二人の間に飛び込んだ。

「カズエ・・・」
「いいの・・・撩・・・」

診察用の椅子に座った香さんの声は弱々しかった。

「ミックを守ることができたんだから、これくらいのケガ――」
「良くない。お前はビルの上から狙われていたんだぞ」
「やっぱり・・・」

ミックが呟く。

「雑魚に気を引きつけておいて、そいつらを片付けたところを油断させておいて、だ。
上の連中は俺が始末しといたがな」
「撩・・・」
「その腕じゃお前のことを連れて行けないな」
「連れて行けないって、どこに――」
「金曜の夜、フェルナンドの秘書って娘を救い出す。だが香、お前は留守番だ」

香さんは何も言えなかった。ただうつむいて、ジーンズの膝をぎゅっと握り締めていた。
その目には今にも零れ落ちそうなほどの涙が溜まっていた。

そして冴羽さんは、冷酷なほど冷静さを保っているようだったが
その眼には怒りが秘められていた。
たとえ彼女の傷がかすり傷であっても。


かすみちゃんも出てきて総監も登場で
劇場版張りのオールスターキャストになってしまいました。

それにしてもアクションシーンは難しい。
香はもっと颯爽と活躍させるつもりでしたが・・・

Former/Next

City Hunter