どうなの? さぁどうするの? |
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指先で机をコツコツと叩くのは、苛立ちを表す仕草なんだとか。それは何らかの不満を持っているときに多くの人がつい無意識にやってしまう癖なのか、それとも口には出さずとも意図的に「私、イライラしています」と伝えたいときのボディランゲージなのか……少なくとも、今のあたしは前者の方だった。 店の有線から流れる、ちょっと夏めいたファンクっぽい変拍子のリズムに合わせて、あたしの指はよく磨かれたカウンターの天板を叩いていた。 「あら、香さん。何かあったの?」 その音を、カウンターの奥でグラスを磨いている店の女主人は聞き逃がさなかった。ふっと意識をこちら側に引き戻されて、美樹さんの方を向こうとして頬杖をついたもう片方の肘が危うく滑りそうになる。 「どうせ冴羽さんのことですよね」 あたしたちの他に客らしい客のいない夏の昼下がり、それぞれの机の紙ナプキンを補充して回っているかすみちゃんが余計な助け舟を出してきた。 「そ、そういうわけじゃないけど……」 と美樹さんが言う。見れば、店の奥にかかっているカレンダーにいくつか赤い×印がついていた。 「え、どこか行くの?」 そう笑うけれども、 「それで、香さんのところは?」 そこまで言われると、あたしも言わざるを得なくなってしまう。 「なぁんにも」 訊きかけたかすみちゃんを美樹さんが目で制す。それも含めてあたしたちの「日常茶飯事」なのだ。 「あーあ、せっかくの夏だっていうのにねぇ……」 つけっぱなしになっているテレビは民放のワイドショーにチャンネルを合わせてあった。そこに映し出されていたのは真夏のビーチの盛況ぶり。 「そうですよ、香さんたちにとっても今年の夏は特別なんですから」 判ってる。だから改めて周りから言われると余計にグサッと来る―― 「――じゃあどうだい? ボクと一緒に一夏のアヴァンチュールってのは?」 今度はカウンターのこっち側、一つ席をおいた隣から声を掛けられた。 「ミックぅ」 そうCat'sの女性陣の十字砲火を浴びても彼は涼しい顔をしながら、長いスプーンでコーヒーフロートのアイスを突っつく。 「冗談だよ冗談、it’s just a kidding!」 と必殺のキラースマイルを振りまくが、 そうかすみちゃんは取りつく島も無い。 「そう、勝手なものさ、オトコゴコロってやつは。でも、オンナゴコロも、ね」 と言ってこちらに目配せを送ってきた。その眼差しに思わずぞくりとする。 結局あたしも、多かれ少なかれミックと同じなのかもしれない。 「それに――」 その答えにかすみちゃんは釈然としないようだ。でもあたしにはよく判った。 天板に手を突き、あたしは勢いよく立ち上がった。敵は今、灼熱のアスファルトの上でガールハントか、それともアパートの冷房の中でシエスタか
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