最近じゃビジネスがらみでもプライベートでも 不良外人仲間の間では このネタで盛り上がらない日は無いってくらいだ。 もちろんUSA国籍を持っていなくても、だ。 「ベースボールと政治の話題は避けなさい」っていうのが マナーブックの仰る会話のエチケットだそうだが、 (夏季)オリンピック・イヤーとなると例外になるらしい。
いつも顔を突き合わせれば同じネタってのにヘキエキして オレ以外は現地の人間しか来ないこのカフェに逃げてきたにも かかわらず、だ。
「ねぇ、ミックはどっち支持なの?」
と無邪気に姫が訊いてきた。 選挙のたびにeenie,
meenie, minie,
moeとやるような この国の有権者とは違って、 どっちに清き一票を投じるかというのは 極論してしまえば自分の生き方をも公言することに他ならない。 同性愛を認めるかor
not、妊娠中絶に反対かor not、 神を信じるかor
not。
もし両派が鉢合わせしようものなら ジャイアンツファンが阪神電車に乗り合わせた以上の 血の雨が降りかねない、それもタイガースが甲子園で負けた帰りに。
「オレの知り合いのほとんどはDemocratsだけどな」 「そうなの?」 「そうさ。バリバリのRepublicanなんて 一度もアメリカの外に出たことのない連中なんじゃないのか?」
あまり意識したことはなかったが、根はどうやら リベラリストだったらしい。
「それにWASPってわけじゃないしな」 「わすぷ?」
「White,
but not Anglo-Saxon, not
Protestant」 「あら、そうだったの」
と声を上げたのはこの店の女主人。
「アイルランド系だったっけ、なぁMick?」 「アーンド・イッタリアーノ。Mangiare,
Cantare, Amore!」
と大袈裟に腕を広げる。
「ってことはカトリック?」 「Si.
でも教会なんて赤ん坊の時、洗礼に行ったきりさ」
カウンターの中ではファルコンが鼻で笑ってやがる。
「じゃあ銃規制には反対なのかしら?」 「そりゃもっちろん!」
ミキの問いに即答すると、カオリは目を丸くした。
「だってトーシローだって銃を持てるんだったら わざわざオレたちに仕事を頼みにゃこないだろ?」
と言って白手袋の手で拳銃を形どった。 |