Secret Love |
|
――Narita Airport. 吹く風はまだ冷たかったが、駐機場に居並ぶ白い翼は春の日差しを浴びてなお一層明るく照り映えていた。ラゲッジを頭上の棚に押し込み、席に深々と腰かける。瞼を閉じれば、昨日までの出来事がありありと脳裏に浮かぶ。 同じようにジェットに乗り込み、海を越えてきたのはほんの数日前のことだったはずだ。だがそのほんの数日間の出来事が今のオレにとってはとてつもなく長い時間のように思えた。そのたった数日の間に自分の生き方が覆されてしまったのだから。 もしかしたら生まれて初めて、本気で誰かを好きになった。 彼女が誰かのものだとかフリーだとか関係なく、その心を射止めたいと思った。戯れの恋でも、陥落させるまでのゲームでもなく本気で幸福(しあわせ)にしたいと思った。そして、彼女を幸福にするために――自分から身を退いた。 今頃カオリは見送り用のテラスで、オレの気持ちも知らないまま、リョウに肩を抱かれて佇んでいるのだろうか。それはきっと映画のワンシーンのようにお似合いの光景だろう、あたかもヤツの腕は彼女を抱き寄せるために誂えられたかのように。誰もその間に割って入ることはできないだろう。 あたしはまだあんたのパートナーよ!! あの悲痛な叫びが今も耳に沁みついて離れようとしない。 でももし、あいつより先にオレが彼女と出逢っていたら?そのときは彼女の心を手に入れることができただろうか? だけど――記念に受け取ったポートレイト、 ――カオリ、いつまでも君を愛している 今も柔らかな頬の感触が、この唇に残っている。 「Death...for the traitor(裏切り者には死を)」 ああ、おいでなすったか。少々出迎えには早すぎる刻限だが。南米系と思しき男、手にはリモコンスイッチ。まさかこの機もろとも始末する気か、罪のない乗客を巻き添えにして――だが、ここで死ぬわけにはいかない。オレにはやらなければならないことがあるのだ、カオリのために。 「It’s ...the rule of “union”(それがユニオンの掟)――」 なおも男はスイッチを押した――エンジェルダスト、まさか!? 鮮やかなポートレイトが、手のひらから零れ落ちていった。 featuring 『Secret Love』by TUBE これは絶対ミック、それも完全版29巻の空港のシーンだろう! ということで、ディテールには目をつぶってCH的に逐語訳。 でもこの歌、名曲なんですよ。 その良さのいったい何%を店主の拙い文章で伝えられたでしょう・・・ 歌詞も歌もサウンドも総てがドラマティックで ミックなんざにはもったいないくらい(結局はそれ;笑) もし興味があれば“SUMMER CITY”聴いてみてくださいませ。
|