一人では解けないパズルを抱いて |
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二人だけの昼下がり。
俺はいつもの芸術鑑賞(香に言わせりゃただのエロ本、らしいが)、 「何やってんだ?」 それは聞き捨てならないが。 「で、どうしたんだよ。さっきから行き詰まってるんじゃねぇの?」 ルールとしては簡単。9×9の升目の中、縦・横・3×3の升に1から9までの数字を重ならないように埋めていくだけだ。見れば香は初級編の問題ですでに音を上げているようだった。でも、今のところ数字が重なってしまったり、思いつきで入れてしまっているようなミスは見当たらなさそうだ。 「んー、ここに7が入るんじゃねぇの?」 こういうのは根を詰めすぎると視野が狭くなって、見えるものも見えなくなってしまうものだ。もう一度見直してみると意外な見落としが見つかったりする。 それは人間も同じ。いつの間にか周りの状況に雁字搦めにされて、居場所を決められてしまう。こいつ――香だってそうだ。本当はこうやって俺の隣にいるような女じゃなかったはずだ。しかし実の親を失い、育ての両親も亡くしてたった一人の兄すら失い、俺の元に転がり込んだ。その兄を取り戻して、やっとこいつも自由になれると思いきや、それまでの年月があまりにも長すぎた。そして結局、香の居場所はここしかなくなってしまった。 「あっ、じゃここに4が入るね」 香の居場所が決まれば自然と俺の居場所も決まる。 一つ升目が埋まるとそこからドミノのように数字が埋まりだす。 海坊主が居着いて美樹ちゃんが追いかけてきて、かずえくんが押し掛けてきて、 「ねえ撩、見てみて!もうすぐ全部埋まりそう」 ああ、パズルの神様――なんてものがいるのかどうか知らないが――
店主が数独にハマってるので、香ちゃんもハメてみました。
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