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はっと目が覚めた。 ――あたし・・・いつの間に。 撩の帰りを待ったまま、ソファで寝入ってしまったらしい。
夢を見ていた、ということは覚えている。決していい夢ではなかったということも。 きっと今夜は、いつものように飲み歩いているのではない。あたしに言えない――裏の、殺しの仕事。そんな夜は硝煙と血の匂いを誤魔化すように、アルコールと、女の匂いをさせて帰ってくる。
――あたしじゃ駄目なの? パートナーとしても、女としてもあたしを認めてくれない、心の奥底のどす黒い闇に分け入らせてくれない、そんな撩の気持ちが判らなくなる。 愛されたい、女として。抱かれたい、撩に。 最初は淡い憧れだった。しかし、いつしかその願いは形を帯びたものになっていった。そんなことを言えば穢らわしいと軽蔑されるだろうか。でも、あたしも女なのだから。
空には十六夜の月。
見た目では昨日の満月と何ら変わりは無い。しかし、明らかにそれは欠け始めているのだ、半月後の朔へと。 ――あたしも、同じ。 いつまでも若く、綺麗なままでいられるわけじゃない。少しずつ容色は衰えていく。ならばこの若さは何のために、誰のためにあるというのか。ただ徒に朽ちていくのは余りにも口惜しすぎる。
そんな本心を、撩の気持ちさえもかわすことをいつしか覚えてしまった。そして夜が明ければいつもの、無垢な香を演じればいい。 ――香、と夜の果てからあたしを呼ぶ声が聞こえたような気がした。 もちろん元ネタは『愛と宿命のマグナム』ED『十六夜』
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