to his coy mistress |
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壁の花、というのだろうか。 決して広くないパーティ会場で、私は所在なくたたずんでいた。 集まっているのは日本在住の外国人たち。わりとカジュアルな格好でそれぞれがグラス片手ににこやかに談笑している。このような付き合いもジャーナリスト・Michael F. Angellにとっていつもの仲間同様に欠かせないものなのだろう。 「パーティっていってもそんなにフォーマルなものじゃないんだ」 と彼は言ってくれたが、こういうフランクな場の方がかえって気が重い。誰もが打ち解けた雰囲気で会話を交わしているというのに、私はその中に入っていけないのだ。 「Mick, you're so happy guy to marry such a beautiful Japanese woman! いかにもアメリカ人らしい白人男性がオーバーアクションでミックの肩を叩く。 たとえば――そう、香さん。彼女だったら初対面の相手でも物おじせずに話しかけることができるだろう。だから私も彼女たちと友人になれたのだし。 明るくて、快活で、物怖じしなくて・・・そういう人になれたらどんなに良かっただろう。でも私はなれなかった。内気で、人付き合いが苦手で、いつも通知表に「積極性が足りません」と書かれて親を困らせた。おしゃべりの輪の中に入るよりは、一人で本を読むか理科室に籠っている方が好きだった。医学部に入ったものの、患者を診察しないといけないことに気づいて慌てて研究の道に進んだほどだ。あの偽装結婚だって、あれで一生分の勇気を使い切ってしまったに違いない。今、あんな思い切ったことができるかと訊かれてもYesと答えられないだろうから。 (やっぱり香さんの方がいいわよね・・・) 自分から輪の中に割って入っていくミックの背中を見ながら、いつの間にか頭の中にそんな考えが浮かんでいた。 「What's wrong(どうしたんだい), Kazue?」 彼の碧い目が心配そうに覗き込む。 「――悪かったね、カズエ。キミはこういうところはあまり好きじゃなかったね」 談笑の輪を遠くに眺めながら、そっと肩に腕を回した。 「でもそれをネガティヴに捉えることはないよ。それがキミなんだ。 そう言うと私を連れてこの場を立ち去ろうとした。 「いいの?」 「それに、今度からは『ボクのsweetheartの恋人はtest tubeなんです』 私にそんな厚かましさもユーモアのセンスも無い。でも、だからこそbest partnerなのだろう。クロークで荷物を預かると私たちは華やかな会場を後にした。 店主自身、香のように「元気で明るく」というタイプではなく
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