City Hunterはキミの味方

ようやく今回の依頼も片がついた。
内容は人探し。依頼人は男の人、しかも結構いい年のオジサンだったので撩も最初はやる気ゼロだったんだけど、写真見せられて100%その気になってしまった。
探す相手は・・・お約束どおり美人で。このオジサンの息子の奥さん、つまりお嫁さんなのだが、数ヶ月前に出て行ってしまったというのだ。そして八方手をつくして探した結果、この東京にいるということは判ったのだがそれ以上はさっぱりだという。
撩には人妻だって釘を刺しておいたけど、「是非ともお目にかけてみせましょう!」と安請け合いしちゃったもんだから。まったく、本当はあんたがその美人にお目にかかりたいんでしょうが。

ともかく、撩が本気になればこの東京で美人一人探すのなんて造作もなかった。
普段は「人探しなんざスイーパーの仕事じゃねぇ」なんて言ってるくせに。彼女はこともあろうにこの新宿にいた。歌舞伎町の小さなバーでホステスをして。
そこまでは実に簡単だった。しかし、彼女には彼女の事情があった。
嫁ぎ先というのがその地方では古くから続く旧家だそうで、彼女の期待された役割はまさしく『長男の嫁』そのものだった。跡取りを期待されるが子宝には恵まれない。病院に行って彼女には原因がないと診断されたにもかかわらず、親戚一同の目は彼女に向けられたまま。それを庇うはずの夫すら彼女の味方になってくれなかったという。

「だから家を出たんです。もうあの家には戻るつもりはありません」

そう彼女は言った。

尋ね人は見つかり、あとは依頼人に報告するだけ。そうすれば後日報酬は振り込まれ、相変わらず火の車の冴羽商事の財政状況も少しは好転するはず。
だけど乗り気がしなかった。お舅さんに彼女の居場所を教えれば、彼女はあの家に連れ戻される。それが彼女にとって幸福なはずがない。
でも・・・これは仕事だ、依頼なんだ。依頼は遂行しなくちゃならない。

報告に向かうために袖を通した、いつもよりいい生地のブラウス。玄関にはよそ行きのパンプス。だけどソファから立ち上がれなかった。

「やる気あんのかよ、香ちゃん」

いつも通りのやれたジャケットに身を包んだ撩が、あたしよりやる気なさげにソファに横になっていた。顔の上に覆い被さってるのはいつものエロ本。

「あんたこそやる気あるの?」
「ヤル気だったらいつも満々、ほら」
「見境なくおっ立ててんじゃな〜いっ!」

どごっ

とハンマーの餌食になるのもいつものことで。

「ほらほら、報告に行くんだろ?」

そう撩は重いハンマーの下からのっそりと起き上がった。

「だけど・・・」
「仕事は仕事、依頼されたからにはそれに応えなきゃならない、
って槇村が口煩く言ってたっけ」
「アニキが・・・」
「でも槇村だったらきっとこうすると思うぜ」

とテーブルの上に置かれた書類を真っ二つに破り捨てた。それは今回の報告書。

「探しました、でも見つかりませんでした。それで依頼終了」

お判り?とあたしの顔を覗き込む。

「ま、撩ちゃんとしてはこの新宿からもっこりちゃんが一人でもいなくなるのは
さびしいもんね〜♪」
「あんたってヤツは結局――」
「でも前金は結構弾んだんだろ?成功報酬がいただけないのはちょっと痛いが、
それだけでもツケは返せるだろ」

そういえば「こういう相場はよく判らんのですが・・・」と結構な額を着手金として渡してくれたっけ、しかもキャッシュで。
その数倍はある成功報酬は確かに惜しいけど、でもシティーハンターとしての正義には変えられない。シティーハンターは美女の味方、なのだから。

あたしはようやく立ち上がった。さて、依頼人になんて言い訳したらいいか。撩の手はそんなあたしを支えるかのように肩に置かれていた。

あとがき、という名の言い訳

miさま、果たしてこんな駄文でよかったでしょうか?
ブログの17000番踏んでいただいた記念のリクが「やる気あんのか?○○」
それプラス、「やる気あんのか?といってる本人が一番やる気なかったりして」
という店主の趣味が反映されたブツになってしまいました。
タイトルとしては、「シティーハンターは美女の味方」と言いながら
実は一番は香ちゃんの味方なんだよ、というのが本文でも上手く出せたかどうか・・・。

遅くなりましたがどうかお受け取りくださいませ。
苦情、悪評甘んじて受けますので。



City Hunter