冬の元気なごあいさつ

冬の足跡が近づき始めると、季節感なんてまるでないこの街にも年の終わりの空気が漂い出す。
例えばクリスマス仕様のショーウィンドウ、
例えば街路樹を彩るイルミネーション、
例えばあちらこちらで配られる来年のカレンダー。
日の当たらない世界に生きているはずのあたしたちですら浮世のしがらみはあるもので、この時期になるとご近所さんから知り合いから、カレンダーがこの冴羽商事に舞い込んでくる。

「あたしこのカレンダーもーらいっ♪」

筒状に巻かれたカレンダーをビニールの包みから外し、リビングの床にずらりと並べる。年末恒例のカレンダードラフトだ【笑】 こうして方々から頂いたカレンダーの中から、来年一年自分の部屋を飾る一枚を指名するのだ。といっても毎年指名する候補は同じなのだが。

あたしが選んだのはCat's Eye特製カレンダー。毎年猫の写真入りのカレンダーを作ってはこの時期お客さんに配っているのだが、今年は(というか来年は)子猫の写真入りで、部屋に飾っておけば癒されること間違いなしだ、よほどの猫嫌いでない限り。

「それにしてもよくタコ坊主が何も言わないよなぁ、毎年これで」
「だって写真なら匂いがするわけでもないし、にゃあとも鳴かないじゃない。
お店に飾っておくわけじゃないし」

それに、印刷業者は出入りの食品業者が紹介してくれたものらしい。そこが「店名がCat's Eyeだから」という安易な理由で猫のカレンダーにしたのを、紹介者の義理もあって毎年続けているんだと美樹さんが言っていたっけ。

「でもいーもんねー、撩ちゃんはこれにするからー♪」

撩が指名したのはビデオ屋の源さんから貰ったカレンダー、それも一握りの常連さんにしか渡さないある意味レアものだ。それもそのはずアダルトビデオメーカーの販促用で、きわどい姿の人気AV女優が(もちろん公序良俗の範囲で)でかでかと載っているんだから。

「麗香さんからのは、来年もリビングにしようかしら」

さすがにRN探偵社のは社長のセンスの良さが光り、毎年ポスターがわりになりそうなものが配られる。今回は東京の夜景。都会的な雰囲気がそのまま事務所の実力と信用のアピールとなるわけだ。

それ以外にも、主に撩行きつけの水商売関係からかなりの数のカレンダーを貰うのだが、階上の勉強部屋やら地下の射撃場(!)に無理やり押し込んでも、毎年結局一度も破られることのないカレンダーというのが出てしまう。

「キッチンはこれかな」
「ああ、そうだな」

そう言って指差したのは、この中で一番シンプルであろう、近所の酒屋さんから貰ったカレンダーだった。何の飾りもない、ただ三十数個の四角の中に数字が配されているだけのもの。その下に小さな余白があって、そこにいろいろな予定が書き込めるようになっていた。
二人の誕生日からごみの収集日まで、今年もいろいろな予定が書き込まれていった。その一枚一枚はすでに新聞紙と一緒に回収に出されて手元には残っていない。だがその一枚が、撩と一緒に過ごせたひと月の大切な証なのだ。
その証の今年最後の一枚は、今キッチンで寒風に吹かれている。
今年も残りわずか、それを撩と一緒にめくることができるという保証はどこにもない。まして来年のカレンダーを最後までめくり通せる保証など――でも、

「最後まで使いきれるといいね」

普段は決して口に出すことのない小さな不安が、思わずついて出た。

「ああ、使いきれるさ」

そういう撩の言葉に何の根拠もない。だがその言葉が、とてつもなく頼もしくあたしの胸に響いた。










「だぁって、11・12月のカレンダーはボキの大好きな爆乳プリンちゃんなんだもん♪
それをめくるまでは死んでも死にきれないもんね〜♪」
「おのれは一回死んでこいっ!(ドゴッ)」

カレンダーがあっちこっちから来ると、いよいよ年の瀬って感じですね。
ウチでも毎年、カレンダーが出そろうとドラフト会議【笑】になります。
ちなみに店主の部屋は毎年、某生命保険のディズニーカレンダーですw


City Hunter