勝手にLiner-Notes

〜SUMMER ADDICTION〜


ども、久々の『勝手にライナーノーツ』です。それくらい店主にとって久々のヒット、会心の一撃でした。
TUBE34枚目のオリジナル・フルアルバム“SUMMER ADDICTION”。
新たな試みをした以上、それは当然のことなのかもしれません。もしそうでなければギャラ返せということ【苦笑】 プロデュースを務める武部聡志氏を含め全曲を外部アレンジャーにお任せしたのですから。それまでも“Soul Surfin' Crew”や“OASIS”など、メンバー以外の編曲者を迎えたアルバムもありましたが、そのときはBeing内の、TUBEに比べればまだまだ若手。でも今回は同年代の本間昭光氏を除けば、TUBEが頭を下げなければならないようなベテランぞろい。これで失敗作に終わるわけが、終われるわけがない!
その代わり、ギターソロなどのはっちゃけ感が少ないといえばそうなのかもしれませんが、それまでのややもすればマンネリズムに陥りがちだった彼らから一皮剥けた今年のTUBE。今年のみならず、来年以降も楽しみな一枚になったのではないでしょうか。


♪ JUST IN TIME SUMMER

オープニングチューンに相応しい爽やかさと疾走感のある曲。というのはアレンジとしてはシンプルなバンドサウンド、というのが今までの定番だったのですが、むしろ緻密ともいうべきサウンドを形成。これじゃ天下の春畑道哉もギターレコーディングに6時間もかかるわけだよ【泣】 だからといって本来の爽やかさが薄れてしまったかというと、まるで細かなレース越しに見上げた夏空の碧さといった感でしょうか【笑】 
約束してた18の夢ってフレーズは、聴く人にとって自由に「28の夢」にしても「38の夢」にしてもOKですよね!?

♪ 僕が悪かった

今作最大の目玉商品なのではないでしょうか。なにせ、作詞が天下の秋元康ですから!初回盤DVDのメイキングで前田さんが詞にかなり四苦八苦していたので、そのまま投げちゃったのかもしれませんが【苦笑】
外部の作詞家起用は“Remember Me”(1989)以来なのですが、聴く前はちょっと不安でした。というのも、作詞というのはヴォーカリストの個性に対して当て書き、云わばオーダーメイドでなければならないわけですから。ずいぶん昔に、やはり大御所の方の作詞でありながら、オーダーどころか“吊るし”のようなきょくがありましたので。まぁそのときはまだTUBEの個性が固まってなかった頃ですが。なので、亜蘭さんたちに並べるかが心配ではありました。
でも、さすがは売れっ子アッキー【笑】 ちゃんとここ数年の前田的ヴォキャブラリーを研究したんじゃないかという詞を書いてくれました。これならイージーオーダーくらいかと。一方で飲みかけのビール そこに置いてというクローズアップ的なレトリックなどはさすが本職。
メイキング内では『横浜ベイブルース』という仮タイトルがついていた昭和テイストな曲だけに、コブシをつけて歌ってしまうと歌謡曲になりがち。捻りもなくストレートに歌うよう心がけましょう。

♪ いつも、いつまでも

今年のTUBEの勝負をかけるシングル曲、なのですが、ラジオで先行公開されるや否や少なからず衝撃が走ったとか【笑】 いわゆる3連のロッカバラード、と呼ばれるタイプでして、確かにリズムは3連符の「タタタ・タタタ」ですね。過去に様々なバンドがこのスタイルを手掛けているそうですが、洋楽はほとんど聞かない店主にとってはどうしても『君といつまでも』なんですよねぇ【苦笑】 どこかで前田さんのセリフが入ってくるんじゃないかという錯覚がw 一昨年の『灼熱らぶ』といい、やはりTUBEは湘南GSの直系なのでしょうか。

♪ カラフル

『カラフル』というタイトルとは裏腹に、ここまで無彩色の世界が前田さんに書けたのかというのが個人的にはちょっと意外でした。1番Aメロの「捨てられた子猫みたいな」とか「星空を見上げるねぐらというのは今までのTUBE的ヴォキャブラリーには無かったフレーズかと。曲調はライナーノーツ曰く「TUBE流ラブ&ピース」というようなレゲエチック・サウンド。彼らお得意の曲と詞とのミスマッチもさることながら、Aメロまでの歌詞が無機質であるからこそ、1番のサビ以降の広がる色彩がより鮮やかに脳裏に思い浮かぶよう。

♪ 桃色ポンパドール

TUBEお得意なすれっからしな女唄。今回のヒロインはライナーノーツによれば「ホステスさん」。今どきキャバ嬢、というか「キャスト」というらしいのですが、やっぱりこの昭和歌謡サウンドでは「ホステス」でしょう。それも妖しげなピンクがかった照明にベルベットのソファ、金ぴかなインテリアの“キャバレー”という雰囲気がお似合いかと。
そんなカタギとは言いづらいお姉さんの曲ではありますが、今どき女子高生のあこがれの職業にキャバ嬢がランクインするご時世、こんな「恋でも愛でもない哀しい何か」from ライナーノーツに共感するカタギのお嬢さんも少なくないのでは。モテとかテクとか、そういうものとは紙一重の世界ですから。

♪ 泣いちゃえば

アルバムを通じて唯一、編曲のクレジットに武部氏と並んでTUBEが名前を連ねている曲。それだけに、まさにTUBEの王道というべき爽やかかつポジティヴな一曲。
駆けっこだって勝負 勉強だって勝負という出だしの歌詞を聴いて、あ、これはもしたしたらいわゆる『ゆとり世代』がターゲットなのかなと思ったのは店主だけではないはず。ちょうど今年、彼らが大卒の新人として社会に出てきましたが、店主自身も社会人になって、そういう世代論的なものに触れることが多くなったもので。彼らの大部分はそういう競争といったものを極力排除した中で育ってきたようなものですからね。でも世の中そんなに甘くない、「笑えるのは いつも一握り」。勝負を知らないということは、勝ちも知らなければ負けも知らない。自ずと打たれ弱い世代と言えるのではないかと。
そんな彼らに対して大切なのは かっこいい負け方と言ってしまうのはさすがバブル世代【笑】 負けるにしてもカッコよさにこだわる、その下の店主ら氷河期世代にしてみれば虚栄かもしれませんが、店主は嫌いじゃないですけどね、そういう生き方。

♪ 響け、夏詩

聴くたびに涙なしには聴けません。
ここ数年のTUBEには店主は疎外感のようなものを感じていました。夏の海と恋と友情というような、TUBEらしい青春とは縁がないまま今まで過ごしてきました。なのに彼らが歌うのは相変わらずそんな真夏の風景と、そのような青春を送ってきた、主に同世代に対するエールばかり。店主の共感が入り込む隙は微塵もありませんでした。
でもこの曲はきっと、夏はいつも部活や勉強でナンパどころでなくても、もうずいぶん夏の海に行ったことがなくても、恋人や友達がいないまま大人になったとしても、ただTUBEが好きというその一点だけで誰もが共感できるのではないでしょうか。

人の数だけ そこには 物語が
ひそんでいるだろう こたえてよ

その「物語」の中にはTUBE的な夏もあれば、TUBEらしからぬ夏もあるはず。でもその一つひとつの、どれ一つとなく決して同じもののない物語を一つとなく否定することなく、そのすべてに寄り添おうとする姿勢に救われた思いがしました。こんな自分でも、TUBEは傍にいてくれると。
そんな、前田さんの包み込むような声が暖かい、いわゆる『大バラード』ではないけれど胸に浸み込んでいくバラードです。野外のラスト曲かな。

♪ LIP SURVICE

TUBEのアルバムには欠かせないラテンナンバーですが、『あー夏休み』や『恋してムーチョ』のようなカーニバレスクかつ能天気なラテンではなく、日本の歌謡曲伝統の、云わば”ムード・ラテン歌謡”の系譜でしょうか。アレンジはポルノグラフィティなども手掛ける本間氏ですが、やっぱりTUBE色に塗りつぶされてますね。恋してるLIP LIP LIP」の“ろくぶて”的言葉遊びもさすが【笑】
それ以上に「やられたぁっ」と思ったのは、1番サビの締めこれでちょっと眠れる この1フレーズでそれまでの口説き文句ともいえる歌詞が全部引っくり返ってしまったと感じたのは、この曲を聴きながら思い浮かんだのは、“もっこり美人”を抱き枕にしないと眠れないどこぞのバカ種馬だったからかも【苦笑】 つまりはこの曲全体が本気なのか、それとも『リップサービス』に過ぎないのか、虚々実々は曖昧なところ。ライナーノーツではこれと『桃色ポンパドール』を対にしていましたが、騙されているのは男なのか、それとも女の方なのか……。

♪ LOVE ADDICTION

桃色ポンパドール』『LIP SURVICE』をそれぞれアンサーソング的にライナーノーツでは述べていますが、店主的にはさらにこの曲を加えて三部作にしたいところ。つまりはこれは男側の“本気ヴァージョン”というわけで【笑】
どんなに惚れて夢中になっても、相手はしょせん「金もってこいが真のこいなり」の水商売。マジになっても煩がられるだけ。じゃあこの3曲も費やした恋心は無駄になってしまうのか。いや、ココロが目覚めりゃ世界はハジケルのですよ。恋をすれば世界が変わる、たとえ振られて終わっても。そしてあの娘にADDICT(中毒)だったのが恋愛そのものにADDICTになってしまう。でも、ひとつ恋をするたびに世界がハジケていくのだから……。
うねるリズムがたまらないファンク・ナンバー。おそらく野外では何らかのギミックで大盛り上がりすることかと。

♪ 曖昧な籠

LIP SURVICE』に続き本間氏アレンジですが、確かにこっちはak hommaっぽいような。どこがどう本間氏っぽいかは前ソロ『恋ノウタ』や『キセキの風』などを聴いていただければなんとなく判るかと。そんなシンプルかつポップで軽快なナンバーではありますが、そこで歌われている言葉は重く、深い。「こんな歌詞、前田さんが書けたの!?」と驚くくらい。
ソロ活動も追っかけておられる方はご存知かと思いますが、TUBEの前田氏が“ポジティヴ前田”だとすれば、『いいわけ』や『Smash』などのソロの同氏は“シニカル前田”かと。最近では『妄想MAN DEBUT』などTUBEでもシニカルの片鱗を見せていますが、この曲はそんな斜に構えた冷笑的な言葉ではなく、あくまで真摯に真っ直ぐに世の矛盾を暴き出している、最近ではあまりそのような歌詞は無かったような。もしかしたら、曲が書かせた詞なのかもしれません。
そんな時代の中で『夏』を通じて彼らは何を歌っていきたいのか、そんなTUBEのマニフェストともいうべき曲のように感じました。

♪ 青の道標

このアルバムが出たのは店主が会社をクビになった後。そんな精神的にも崖っぷちの状況で、これでもし今年のアルバムがここ数年と同じように自分に寄り添ってくれないようであればファンを辞めてしまおうとまで考えていました。それだけしばらくグダグダだったんですよ【泣】 でも買って通して聴いてみて、曲そのもののクォリティの高さもさることながら、店主のような邪道なTUBEファンでもちゃんと共感できる中身に、もうしばらくファンを続けていこうと思えました。そんな中でも、今の自分のために当て書きしてくれたのではないかと思ったのが『青の道標』でした。
路頭に迷って、前の就活のときを思えば自己分析しすぎて鬱になりかけて、またそんな日々が続くのかと毎日ひとりで涙にくれていましたが、それは幸せに続く道標だと歌ってくれたのを聴いたとき、まさに前田さんたちが店主のために背中を押してくれたようにさえ思いました。そして、それ以上に心強かったのは、

誰も知らない明日を 探す勇気があるなら
涙はきっと無駄じゃない

30間近で職歴もないまま、博士課程中退で就職したうえ、そこも1年ちょっとでクビだなんてローリングストーン人生決定、道なき道を一人で切り開いていくことに心細さもありましたが、そう言ってもらえたことで逆に「よーし、やったろうじゃん!」という気になりました。誰かと同じような人生なんてつまらない、なんてことを前に歌ってたような気がしましたし。
そんな、あったかくも聴く人誰もに勇気をくれそうなミディアムバラードです。


通して聴いたファースト・インプレッションは「新たなTUBEの定番」でした。それまでも“浪漫の夏”や“OASIS”など、そのときどきで「これぞTUBE!」という“らしさ”を詰め込んだ名盤がありました。“SUMMER ADDICTION”は店主の中ではそれらに充分匹敵するアルバムだと思います。そして、特筆すべきはファン以外にも「今のTUBE」を伝えるための推奨盤に胸を張ってできる一枚かと。それまでのアルバムも良いもの、自分的に好きなものはいろいろありますが、例えばベタラテン・ナンバーなど内輪受けに終始してしまうものもありました。(好きなんだけどねぇ、恋してムーチョ)でもこれは、そうそうたる外部アレンジャー陣がTUBEの個性を客観的な眼でカッコよくアレンジしてくれているのでは。その意味では、TUBEを知らない同年代以下の人たちにも良さを布教できる格好のアルバムになったのではないでしょうか。
もちろん外部の人間が手掛けたという点で「本来のTUBEらしさ」的にはどうなのかという疑問はあるとは思いますが、店主が王道アルバムとして推す“OASIS”だってアレンジャーとのコラボだったわけですし、昨年、一昨年のアルバムと比べてみると、なぁなぁによる行き詰まりもあったのは確か。それに、来年またセルフプロデュースに戻っても、今回のがいい触媒になってまた新たなインスピレーションが彼ら自身の中から生まれることと期待しています。
さて、恒例の格付けですが……

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星4つ!! いや、これくらい順当でしょう!ということで皆さま、TUBE初心者の方も未経験者の方も、聴いて損はないですよ♪


Coming Out!