勝手にLiner-Notes

ー『夏景色』−

2004年、TUBEの26枚目のオリジナル・アルバム『夏景色』は、

少なからず今までのTUBEの印象を変えたかもしれない。

というのも、これは「TUBEといえば!?」という問いで「夏!」という答えの次に挙がる「海!」で聴いてもよし、そして、ここからが本題なのだが、山で聴いても似合うのだ。

いや、むしろ夏、帰省で帰った実家の縁側でセミの歌を聞きながら聴くのが一番ぴったりなのかもしれない。

ジャケットの写真もまさに、どこかの田舎の家の縁側で

浴衣姿でくつろぐ4人の写真だ。

これは、今までで一番店主にとって身近な風景だった。海なし県に生まれ育ち、真夏の海のサーファーもナンパ青年もフィクションとしてしか知らず、ただセミの大合唱と夕立の雷の中でTUBEを聞いていた店主にとって初めて素直に感情移入できるアルバムかもしれない。

先行シングルの『夏祭り』のキャッチコピーが
あの頃に帰る夏」だったが、この『あの頃』というのは
今までのTUBEでおなじみだったティーンエージャーの熱かった頃だけでなく、毎日朝から晩まで、宿題そっちのけで遊びまくってた幼いころの夏休みまで含まれるような気がする。

それは、真夏の海に縁のなかった人たちにとっても身近な思い出だろう。そういう意味ではTUBEの世界だけでなく、新たなTUBEファンをも広げたかもしれない。

 

 

♪ 海の家 ♪

 

一発目にふさわしいノリノリのナンバー。ちょっとコミカル。

ここでも「家族連れやカップルやらで」と視野を一回り大きく広げてる。考えても見れば彼らもむしろ前者の年齢であり、メンバーの中には子持ちだっているのだ。

でも海の家の兄ちゃんの一人称が似合いまくってる、というのも前田氏は昔、海の家のかき氷のバイトをやってた(というのを聞いたことがある)からだろうか?

それにしても曲中の「海の家」という詞は、むしろ「海のYear!」と表記したいぐらいだ。でもこれじゃサザンのベストアルバムになっちゃうよなぁ・・・。

 

ちなみに、CD Extraで入ってるPVについて。

振りはシンプルだよね。ステージに乗ろうと思ってる人以外は当日でも覚えられるかも。

セットのちゃちさがむしろイイ。

 

♪ 太陽の兄弟 ♪

 

小さい頃、すごくカッコよかった近所や親戚の兄ちゃんが

自分がその年になるとなんだか小さく見えてしまうことがないだろうか。

もちろん自分が大きくなったということもあるけど、当の本人が小さく縮んでしまってるんじゃ・・・

コンセプト的に考えてそんなことを感じた。

いや、むしろ自分の方がそういった眩しい視線で背中を見られている方に近づいてるのかもしれない。だとすればこの歌詞が向けられてるのは店主自身を含む、かつて輝いてた『兄弟』たちなのではないか?

昭和歌謡っぽいメロディ。ブラスもストリングスも“らしさ”全開だが、むしろこれくらいどぎつい方が店主は好み♪

でもニセGSを今まで何曲もやってる分、ワザとらしさはないかな。

 

♪ 夏祭り ♪

 

今までこれほどまでに『』を感じさせるボサノバがあっただろうか?

今までのTUBEにはない涼しさがある。それはリゾートのキンキンに効いたクーラーでも、海の家の扇風機でもなくたとえて言うなれば縁台を吹き過ぎる自然の涼風といったところか。(判りにくい喩えでスイマセン)

ともかく、『日本の夏』というジャンルだけでなく、TUBE全体においても新テイストを切り開いたといえるんじゃないだろうか?

もう暑苦しいなんて言わせないぞ!ってか

そして、ちょっと私的だけどこれ聴いてて、D×Bのシークエンスを思いついてしまった。なるべく早く皆様の前にお見せしたいのですが・・・。

 

♪ 明日の風 ♪

 

ロックっぽい曲調と松本氏の「武骨な」

(と思うんですが、今までの松本詞も)詞がよく合ってる一曲。

松本氏作詞の曲ってこういう骨っぽいロック風なのが多いけど、役割分担ができてるのだろうか?

でも、確かに出だしはロックなんだけどサビはいかにもTUBE。

その点で「いかにもハードロック」じゃない、TUBEらしいロックといえるだろう。

歌詞の「It's not so bad trip」「いつもそばに」とも聞こえないか?そう考えるとダブルミーニングで(むしろリフレインの方)

詞がもっと深く聞こえると思う。

 

♪ 月の雫 ♪

 

しっとりとしたミドルテンポ。

テーマ的には今まででもおなじみの『友達以上恋人未満』だが

作詞・角野氏のロマンチシズムが新鮮で、やはりロマンチックなアレンジとよく似合う。

明日の風』の松本氏もそうだが、それぞれの詞のらしさ、そしてその“らしさ”を活かした曲がいい。

そして、間奏のギターはハル節全開!ギターが涙に咽(むせ)んでおります【笑】

 

♪ 涙を虹に ♪

 

CMでおなじみ。シンプルで覚えやすいメロディラインで、このアルバムで一番TUBE王道色が強いかも。

ライブでコブシ振り上げたい曲です。

特に、今の自分には

「10年先ばかり気にするよりも 今日をめいっぱい生きてみよう」

という歌詞が身にしみます。それ聴いて「がんばろう!」と思うこと自体

サボってる証拠なんですけどね・・・。

「裏切りの雨に打たれて 挫折の嵐にのまれて」

ってのが相馬っぽいなと思いました。どこがどうかはまだ言えませんが・・・。

 

♪ プロポーズ ♪

 

君となら』、『今日からずっと』の系譜に連なるバラード。前者2曲とも遜色ない、噴水にも負けない【笑】大バラードです。

ストリングスも春畑氏・入魂のギターもスケール感を演出してます。もちろん、それ以上に前田氏のヴォーカル、特に後半!楽器のスケールに負けてません。さすが『大』バラード。

 

♪ 夢の翼ひろげて ♪

 

とにかくカッコいい!ギターや最後のドラムソロはギンギンのハードロックなんだけど、じゃあロックなのかというとそうとは必ずしも言い切れない(じゃあ何なんだ!)

明日の風』もそうなんだけど、『傷だらけのhero』みたいにハードロック前面!という熱さはなくって、歌詞がそうしてるという面はあるのかもしれないけど、全体的に爽やかにクールダウンしてる。

熱さと清涼感が同時に存在してる。

そういう意味では、TUBEロックの新境地といえるかもしれない。

 

♪ みんなのキラキラ ♪

 

この夏『マツケンサンバ』に対抗できるのはこれだ!【笑】

恋してムーチョ』、『Bravo!』に続くサンバだが

今まではラテン風味が前面に出てたのが、今回は

「はじめて捕まえたカブト虫にビックリ」

とあくまで『ニッポンの夏』テイスト。

曲を聴いて思い浮かぶのは、『夏祭り』のジャケットのような子供の夏休み。あのころは朝から晩まで楽しかったなぁ。なのに今は、夏休みになるとかえって忙しかったり・・・【ワタクシゴト】

野外でみんなで大騒ぎしたい曲。

 

♪ 月光 ♪

 

・・・『プロポーズ』もだけど、今回入れる必要性があったのだろうか?むしろ曲数はたまってるんだから、1年早くTUBEstを出して、そこで春夏秋冬順に聴きたかったような。

他の曲がさまざまなサウンドをTUBEテイストでこなしてるにもかかわらず、これはベタラテンだもんなぁ。それに、『プロポーズ』は一応冬の歌だけど季語無しなのに、『月光』は秋の歌でしょ。

「枯葉散る夕暮れに」って夏の終わりじゃなくてバリバリ秋だし。

辛うじて「神無月」という大和言葉でアルバム全体とつながってるのかな。

 

♪ 光と影 ♪

 

とあるBBSじゃあまり受けがよくなかった曲。店主の感想はというと・・・『前田節』と琉球音楽との相性がイマイチよくないかなぁ。

そりゃ島唄を聞いて育った夏川りみやBEGINと比べるのはかわいそうだけど。

でも後半のスケール感はアルバムを締めくくるにふさわしいもの。

三線の音が春畑氏のギターと絡み合うことでより活き活きとしてきたというのはある意味で皮肉でした。

三線を使うというアイデアや、個人的に『光と影』というテーマ自体はいいと思うだけに、一言でいうともったいない曲。

でも次はきっとTUBE流に歌いこなしてくれると思うんで、次に期待したい。

 

 

全体として曲調的には、一言でいうと『爽やか』。夏場は少し風があるとそれだけでも涼しいものですが、そんな感じの曲ばかりです。

前半に『熱い』感じの曲を置いて、それ以降は涼しげな曲を並べてるだけに、『月光』は余分だったような・・・。せめて別アレンジで聴かせてもらいたかった。

でも一つひとつの曲のクォリティ、そして『日本の夏』というコンセプトに沿ったアルバムという意図は大いに買います!だからこそ後半の失速が痛かった・・・(蒸し返すなって)

 

さて、星評価するとすれば・・・★★★☆ 3つ星半

昨年の『OASIS』の出来が自分の中でよかった分、どうしても値下がり間は否めない。でもいいアルバムですよぉ!!

 

 

Coming out!