勝手に!Liner-Notes
〜Your TUBE+My TUBE〜
そして、引き続いてのMy TUBE編。3年ぶりのオリジナルアルバム、とはいえ今回は全編通してのアレンジャー(というかプロデューサー)として、前作“SUMMER
ADDICTION”でもアレンジで参加した鳥山雄司氏を招いての制作となり、それだけでも今までにない、新たなTUBEらしさを吹き込んでくれたものと思います。そしてその素材となるのが、前田・春畑コンビによる沖縄・座間味島でのある意味電波少年的【笑】曲作りカンヅメ合宿によるもの中心の完全書き下ろし、ストック無し。まさに30周年を迎えたTUBEの「今」だけが詰まったAnnversary
Albumです。
♪ 裸足のラッキーガール ♪
“Your TUBE”の意外性あるコラボを今まで堪能しつつも、どこか物足りない、やっぱりTUBEはこうでないと!という皆様、お待んたせしました!! というほどの王道感あふれるサマーナンバー。梅にウグイス、前田さんの声にはハルのメロディが良く似合う、さすがの安定感……と思いきや、その理由はそれだけではないような。って何なのこの店主のツボぐりぐり押しまくりの80'sテイストは!! どのくらい王道80'sテイストかというと、バックにスクールメイツが踊ってても違和感ないくらい【笑】 聴きながら思わず「そこでストリングス入れるか〜っ!」と悶絶してしまいましたもの。さすが30周年記念アルバムのオープニングチューン、歌詞のみならずサウンドでも一気に30年の時を飛び越えましたかw
♪ ドラスティック湘南 ♪
さっきまでの王道さわやか路線はどこへやら、の一気に昭和ムード歌謡テイスト。まぁ、2曲目にお遊び系を持ってきて意表を突くのは今までもよくやる手ですけどね、『はよつけ鎌倉』とか『夢のフロリダ』とか。また、昭和歌謡のノリというのも『太陽の兄弟』や『江の島シーキャンドル』などやってきましたけど、一つの頂点を極めてしまったというか……鳥山さんなぜ止めなかった【泣笑】 元はラテンロックだったはずなのに、その面影を辛うじて残す、ハルのサンタナ張りのガチなギターがかえって哀愁を誘います。
♪ いまさらサーフサイド ♪
今さら多くを語る必要もないであろう、今年の第1弾シングル。音数を絞り込んだシンプルさ、その“抜け感”が呼ぶ爽やかさというアルバムの全体像をぐっと凝縮した一曲でもあります。だからこそ特に、アルバムを通して今回目立っているのはドラムスの音。この曲では穏やかなミドルテンポでありながら、ドラムスだけは「全力で」というのが鳥山氏のリクエストだったそう。その結果、ただゆったり流れていくだけでないメリハリが利いているのですが、それ以外にもドラムスの音の“表情”が感じられる曲が他にも数多くあり、リョージファン待望のアルバムになったかも。
♪ SUMMER TIME ♪
今年のシングル第2弾。ど真ん中ストライクな曲名にも驚きましたが、聴いてみて『夏待ち』『夏抱き』の系譜を受け継ぐド王道な曲にも嬉しい意味で仰け反りました。オールタイムベストの別名「王道盤」(命名by店主w)の“Tropical Songs”に、新曲がぽつんと入っているのもこれなら肯けます。歌詞でも「Your
TUBEに刺激された」とのことで、「ビーチサイド」「椰子の木」「小麦色」と、初めて夏歌を出したポッと出の若手かというほどの夏の季語大盤振る舞い【笑】 ある意味、夏のTUBE30年の集大成といっても過言でないような。
♪ ポテンシャル ♪
今年のアルバムの中で店主、文句なしのベストナンバー! この1曲を聴くためにアルバム通して聴くだけの価値のある曲。TUBEでファンクというイメージは薄いかもしれませんけれど、前田さんのルーツの一つがブラックミュージックだし、TUBEでも『一気・本気・元気』や『Do I Do』など今までやってきていますが、自分の中では部門賞です【笑】 当分これを超えるTUBE×ファンクナンバーは現れないでしょう。
まーとにかくカッコいい! 店主@ラッパ好きとしてもツボをゴリゴリと刺激されまくってしまいますが、そこでブラスが熱くなり過ぎないのが鳥山氏の匙加減なんでしょうか。何よりカッコよく、クールに。だからこそ前田氏の熱くうねる、跳び上がる、突き抜けるヴォーカルがより際立ってくる、という感じなのでしょうか。口ずさむだけで気合充分、ファイト一発な効果もw
♪ Pleaze Fleaze Me!♪
先にタイトルだけが発表されたとき、一番興味を引いたのがこの曲名でした。だって“Fleaze”ですよ、TUBEの夏の熱さと対照的な単語ですから。でも聴いて納得、あー、こういう文脈だったのね、というのは聴いてみてのお楽しみ♪ 「凍らせる」という単語とは対照的な熱い、ノリノリなアップチューン。
特筆すべきは曲中のヒロイン。「冷たく熱い」「氷のように冷たいSexy Cat」に、いよいよTUBEもツンデレに参入か!と思った店主はヲタ認定【苦笑】
♪ あの夏へ ♪
タイトル、そして「帰ろう 帰ろう あの夏へ」というサビだけ聞けば「まーたか」という食傷気味なモチーフかもしれない(実際、この手の曲に嫌気がさしていた20代の夏)でも、これを今までのような単純な麗しい過去への回帰願望、と単純には言い切れないのではないだろうか。「二度と戻らない 誰も届かない 昨日は消えたけど」なのだから。もう、実際にそこに、過去に戻ることはできないのだ。その言葉から震災をイメージする人も少なくないかもしれないし、もっと純粋に時間の流れの無情さを思い浮かべることもできるだろう。ただ「僕らが駆け抜けた 季節の数だけ 愛がある」。物は消えても愛と、その記憶だけは決して消えることはないのだ。あの頃には戻れないけれど、あの頃と同じ気持ちなら取り戻すことはできるはず。そして最後の「ありがとう ありがとう あの夏を」というのは、感謝の言葉であると同時に決別でもあるというのは穿ちすぎだろうか。でも、私たちは結局、未来に向かって生きていかなければならないのだから。
♪ WINNERS HIGH ♪
第一印象は「『JUST IN TIME SUMMER』っぽい」確かに前のアルバムのその曲もアレンジは鳥山氏でした。その疾走感はそのままに、戦う者を鼓舞する力強さをプラス。『傷だらけのHero』『You'll be the Champoion』の系譜に連なるファイティングソングではありますが、これに匹敵する=その後も毎年のライヴの定番になりうるレベルかというと……うーん。
♪ Rainbow Town ♪
レインボータウンというのはネイティヴアメリカンの伝説にある街で、そこに辿り着ければ死んだ家族や愛する人に逢えるという。でも、ここに歌われている「街」は、決してそのような後ろ向きなものだけではないと思う。TUBEが震災直後から被災地支援に取り組んでいるのはファンならよく知っている話だ。その被災地で、4年の歳月が経ってようやく「街びらき」のニュースがあちこちから聞こえ始めてきた。『あの夏へ』と同様「子供の頃ずっと君と過ごした/街はもう」無くなってしまった。けれども「ここでゼロから始めよう」と力強く宣言する。その街にあるのは失ってしまった過去だけでない、これから無限に広がる未来が、記憶と深く結びつく。それと同じくらいTUBEもまた、その地の人々と強く繋がっているのだろう。きっと4人が心の支えになったように、4人もまた人々に支えられているのだと感じた一曲。
♪ 海のバラード ♪
そういえば『WINNERS HIGH』にも『Rainbow Town』にも海を思わせるヴォキャブラリーが無いことが気になった。遡れば『あの夏へ』の「打ち寄せる波が」以来ご無沙汰である。曲順というのは全部の曲が出揃ってから決めることなので偶然なんだろうけれど、そこでTUBEの3年間の沈黙の理由にまで思いを馳せるのは詮索のし過ぎだろうか。その「海無し曲」2つを挟んでの、満を持しての『海のバラード』である。でも、だからこそ、その「海」は、今までTUBEが歌ってきた「海」とは違うものになっているのではないだろうか。
海は「どうせ答えちゃくれない」のだ。かつてTUBEが歌う海はもっとフレンドリーだったような気がする。そこに息づく恋や夢を、暖かく見守っていた「母なる海」だったのではないか。でもこの海はもっと峻厳な「父」か――そんな人間の勝手な擬人化すら拒む存在なのかもしれない。けれども「それでいいんだ それがいいんだ」と歌う。たとえ何があっても、TUBEはこれからも夏と、海とともにある。

震災で、被災地出身者を除けば一番堪えたバンドがTUBEだったのかもしれません。「歌は無力だ」発生直後、多くのミュージシャンの口から同じ言葉が発せられました。それはTUBEのメンバーも同じでした。でもそれ以上に、彼らが歌い続けてきたのは海辺で繰り広げられる恋、夢、青春。そんな、ある種のユートピアだった海が一瞬にして牙をむき、多くの生命を奪った――もしかしたら3年間の沈黙はその事実と向き合い、決着をつけるために必要な時間だったというのは店主の勝手な思い込みでしょうか(だとしたら「海しかない南の島で曲作り合宿」というのは結構な荒療治なような;泣笑)
1年目はミュージシャンとしての使命感でがむしゃらに曲を作り(結果、震災支援一色に;苦笑)2年目は外部アレンジャーをカンフル剤にして……でも4年が過ぎて、まだまだままならないことも多いながら、現地は少しずつ復興の息吹を立て始めている、それがTUBEの背中を押してくれたんじゃないだろうかと。
だから、ここで宣言してもいいんじゃないでしょうか。'TUBE is back!’と。またこれからも夏と、海を、熱く歌い続けてくれると。今までのように、とはいかなくても……なので来年もまたリリースお願いしますよ! また3年は待てませんから!!
Coming out!
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