勝手にLiner-Notes

―Nobuteru Maeda
Single Collection+―


今年で前田亘輝ソロデビュー20周年!ということでその集大成といえるのがこのベストアルバム、シングル8曲と、今までリリースしたアルバム7枚から7曲をセレクト。
TUBEとはまた違った、前ソロのコンセプトとして当人も挙げているのが『攻撃性』。それが曲としてはギンギンのハードロックであり、歌詞には時代や社会への痛烈な批判精神として現れてるんじゃないでしょうか。特にアルバムからのセレクトにはそれがよく出ています。
と言っても店主、前ソロのアルバムを一枚も聴いたことがなければ、それと同時期の昔のTUBEもほとんど知りません【爆】そんな店主でよければどうかお付き合いくださいませm(_ _)m

Single Collection

D・A・M・E ('90)
記念すべき前ソロ・シングルデビュー曲。歌詞もサウンドも(細かく刻むベースラインなんか特に)まさにこの時代、という雰囲気。
外車にダイヤに土地もあり」というとこなんてかなりバブリー【笑】
となると携帯電話もあの子のためっていうと・・・初回限定でついてたPVコレクションだと、肩掛け式が多少小さくなっただけのもの!
でもこの曲、確かにシングルとしては一枚目ですが、すでにソロとしてはアルバム3枚を出しており、満を持してのシングルデビュー曲。すでに攻撃的な歌詞、ハードロックという前ソロ・スタイルが確固たるものとして現れてます。
恋ノウタ ('07)
一転して最新シングル。ポルノグラフィティなどを手がけた本間昭光プロデュース・作曲ということで、すでにブログでも書きましたが、聴いた瞬間「ポルノやんか!」と思いました【爆】
そもそもソロワークのコンセプトが『セッション』、今風にいえばコラボレーション、そして「TUBEではできないこと」だとするなら、かなり今後のソロの方向性を決める一曲ではないでしょうか。
そばにいるよ ('93)
TUBEとは違う前ソロらしさとしてアグレッシヴなハードロックとともに、温度感のあるバラード、というのが挙げられるはず。聴く人を優しく包み込むような、たとえるなら北風吹く冬の日のコートのようなぬくもりを感じさせるバラード、というのは良くも悪くも夏バンドなTUBEでは無理でしょう、たとえ冬リリースであっても。
そしてこの泣きのギターは、そう、春畑氏!前ソロでも『UNI』として何曲か作曲を手がけていますが、このギターソロはハルしか奏でられません。
君だけのTomorrow ('97)
言わずと知れた『進め!電波少年・アメリカ大陸横断ヒッチハイク』の応援ソング。ということで、いわゆる『がんばれソング』なのですが・・・。こういう前向きさはソロというよりむしろTUBEですよね。このころ辺りから徐々にソロワークとTUBEとの境界線が曖昧になってきて、ただ単に冬に活動するための言い訳になってきているのかも。アルバム“Hard Pressed”ではまだアグレッシヴにギンギンですが。
Try Boy, Try Girl ('93)
実は店主の初めて触れた前ソロです。このころはまだTUBEにハマったばっかりでソロとの区別はあまりついていなかったんですが、こうやってソロワークの中に位置づけると、ギンギンのハードロックといいシニカルな批判精神あふれる歌詞といい、バリバリの前ソロですね【笑】
ちなみにこの曲は『FIVBワールドグランドチャンピオンシップ』(略してグラチャン)のテーマ曲。この曲聴きたさにバレーボールファンになったようなもの。最近の騒々しいタイアップを笑えなひ・・・
Merry Christmas To You ('91)
TUBE、ソロを通じて初めてのクリスマス・ソング。夏バンド・TUBEとはいえ冬の季語がさりげなく入った曲は今までありましたが(ex. 明日への道冬の海岸通り)クリスマスそのものはさすがに気がひけたのか【笑】
今僕の心の どこを切ってみても/君しか見えないとの歌詞がご本人もいたくお気に入りらしいが、「金太郎飴?」と思ったのは店主だけだろうか【爆】
だがサビを緩急どころかほぼ全編fff(フォルテシシモ)で歌いきった前田氏(当時26歳)の声の馬力には圧倒させられました。
Chrismas For You ('92)
昨年のメリクリ【笑】に引き続いてのクリスマス二部作。実は店主、このアルバム聞くまでこの二つがごっちゃでした【爆】
前作が付き合い始めて1,2年目の熱々クリスマスだとすれば、今年はちょっとツンデレ入ったベテランカップル(熟年夫婦、ともいう:笑)といった風情でしょうか。
そんな風情が暖かい歌声にも表れています。若かりし頃【爆】の高音の伸びにも、さわやかさ以外の何かが感じられるはず。
Always ('02)
ソルトレーク冬季五輪のテレ朝系テーマソング。ということでやっぱりせっせと中継を見ていたバカ【爆】
クリスマス二部作やそばにいるよの系譜を受け継ぐぬくもり系バラードですが、スポーツ中継のテーマソングということで歌詞的にはやはりがんばれ系。君だけのTomorrowでも述べましたが、このあたりからソロ活動がなくなってきたのはそういうところもあるのかもしれない。奇しくも翌年のTUBEは秋冬にもシングルをリリース。もはや冬に活動する言い訳としてのソロが必要なくなってきていたのかもしれない。

Plus

Feel Me, Touch Me ('88 “Feel Me”)
TUBEではちょっとお目に(お耳に?)かかれないようなバリバリのハードロック。実は現B'zの稲葉浩志作曲(ギターにはやはりB'zの稲葉氏が参加)。音的にはライヴさながらに一斉に音出ししているイメージ。
そんなサウンド以上に圧倒されたのが、二番のあのシャウト。ここで歌詞はちょっと・・・店主的自己基準に抵触してしまうので【苦笑】
そんなわけでエロいです。どしゃ降りになるまでって歌詞すらヤバく聞こえるくらい【爆】しかしその心はあくまで真摯にハッピーにしてくれる 愛が欲しい
I'm gonna start again ('88 “Feel Me”)
Feel Me, Touch Meがある意味当時の前田氏の等身大(?)だとするなら、この歌詞をまだ20代前半の彼が書き、歌ったことは驚き。そもそも“Feel Me”では自分だけでなく「身近な闘っている男達」がモチーフとのことだが、むしろ今の前田氏の年齢こそふさわしいかも。
しかしここで歌われている解決策が今すぐこの街を飛び出そうぜ」「日常に埋もれちまって 最初からやり直さなきゃというのがまだまだ青い【笑】
フォローマン ('89 “smash”)
ハードロックと並んで前ソロ・サウンドのコアといえるものがブルースなんですが、これはアコギとブルースハープのみという、100年前にミシシッピ・デルタで黒人のじいさんが歌ってたようなwベタなブルース。
こういう男を翻弄するちょっと小悪魔な女性って、TUBEにはあまり出てきませんよね。D・A・M・E「一歩先ゆく super girl」もそうですが。敢えていうなら女歌の「わたし」が近いのかもしれませんが。この辺にもソロとTUBEの違いが見えてくるかも。
一期一会 ('89 “smash”)
ある意味今作『Plus』の目玉【笑】全編四字熟語のみの曲。
それでもストーリーがあり、最後にオチがつくのだから作詞の苦労は並大抵じゃなかった様子。だがしかし、一つひとつの熟語の意味としてはFeel Me, Touch Meと比べても極めて穏当なはずが、こうして並べていくとかなりヤバい意味になってしまうのはどうして?日本語って奥が深い・・・。
そして最後に「因果応報 自業自得」って笑うところかもしれませんが、この手の事態の第三の当事者である(実は)店主は素直に笑えませんでした。
もう年だ ('91 “Gamble”)
ラジオで言ってましたが、この曲も26歳の、というよりむしろ今の前田氏の年代の曲。今までさんざんアグレッシヴに世の中を斬ってきたシニカル前田の切っ先が、とうとう今度は『自分自身』にも向けられてしまいましたね。
歌詞カードを見てみて、このきわめて散文的な(具体的にいえば短いフレーズで切れてない)詞をどう曲に乗せたのかと思いましたが、これがうまくハードロックに乗ってるんだわ。
しかしこれがTUBEなら「昔の自分を取り戻そうぜ!」になるところがソロだとあー もう年だ/あー もうダメだと投げてしまう。そもそも人間そんなにいつも前向きではいられない。だとするとTUBEのポジティヴ前田も、ソロでのシニカル前田も同じ前田亘輝という一人の人間の側面なのかもしれない。TUBEの『Bloody Soul』で「前田さん、こんなに痛烈な詞も書けるの?」とびっくりしてしまいましたが、すでに彼の中にはそういう一面もあったんですね。
いいわけ? ('93 “Hard Pressed”)
このアルバム“Hard Pressed”はLAで現地の有名ミュージシャンとセッションを繰り広げてできた一枚。そんなわけでギンギンのロックです。この曲もかなりへヴィです。
そんなへヴィな曲に乗ってへヴィな社会を痛烈に批判していくんですが、もう年だでも書きましたが、ソロの場合はそこに解決策って見出せないんですよね。この手で変えてやろうじゃんと前向きなこと言ってるくせに結局はどうすりゃいいわけ?ですから。もちろん世の中万事解決策があるわけじゃない。だとすればTUBEは建前の理想論にすぎなく、ソロこそが本音なのかもしれませんが・・・
この閉塞感をどうしてくれるわけ?
キセキの風 ('07)
そういう意味でいえばこの曲こそが救いなのかもしれない。
恋ノウタ同様、本間氏プロデュースということでやはり何曲か似たようなポルノの曲が思い浮かびました【爆】しかし歌詞は前田節。
決して奇麗じゃない純じゃない自分自身を
愛せればきっと奇跡は起きるよ
という自己肯定は、もう年だいいわけ?でたたみかけるように社会に、そして自分に突き付けてきたNoの後、と捉えるとかなり心にしみてくるはず。


そんなわけで、これらの曲をあえて年代を意識して聴き比べてみると、TUBEにおけるソロワークの意味、なんてものも見えてくるんじゃないでしょうか。でも20年とはいえまだまだシングル8曲、アルバム7枚のみ。単なる「シーズンオフの副業」【爆】ではない前ソロはこれから。そしてそこで得られたものをまたTUBEにフィードバックしてくれるはず・・・。
今回は『勝手にLiner-Notes』恒例の星付けはやりません。
でもこの夏のリリースって、これだけなんだよねぇ【溜息】


Coming out!