勝手に!Liner-Notes

Michiya Haruhata BEST WORKS 1987-2008
〜ROUTE86〜

春畑道哉といえば天下御免の夏バンド・TUBEのギタリストにしてソングメーカーというのは周知のことでしょうが、もう一つ、日本を代表するギタリストだということは一体どれくらい浸透しているんでしょうか?
日本を代表すると言われても、名の売れたギタリストといえば「B'zの松本さんじゃない」とか「やっぱ布袋だろう」というのが世間一般の声かもしれませんが、あのギター小僧の憧れ、フェンダー社と初めて契約を結んだ日本人ギタリストがTUBEのハルなんですから!
確かにTUBEってロックバンドじゃないし(だと思いますよ?)そういう点でコアなギターファン以外にはギタリスト・春畑道哉の名声は馴染みが薄いとは思いますが、そんなハルの魅力が詰まった初のベストアルバムです。ギター小僧もTUBEファンもそのどちらでもない人も、TUBEファンでも春ソロは今までフォローしてなかったわ、という方も、一度聴けばギタリスト・ハルを再認識できるんじゃないでしょうか。

などと御託を並べてみましたが、店主、音楽には全くの素人です。
音楽的なことはブックレットに載ってるプロの方の書いたライナーノーツにお任せして、こちらは一ファンの思い入れ全開で参りたいと思います。

♪ Jaguar '08 (2008)

言わずと知れたCX系プロ野球中継のテーマソング。ギンギンのギターロックです。ひいきのチームが勝ってる試合のハイライトでこれが流れるのを心待ちにしている野球好きのTUBEファンも多いはず【笑】
長らくCD化が待ち望まれてましたが、局との契約やら何やらで今回やっとの収録です。

♪ Wing (“Moon” 1992)
実は店主、春ソロのオリジナルアルバムは2枚しか持ってません【爆】
“Moon”はそのうちの1枚です。ギターギンギン、というよりメロディの美しさを聴かせるアルバム、という印象がありますが、その中でもこの曲は『TUBEの王道』的ポジティヴポップ、初めて聴いたときに前田さんの声が入っていないのが不思議に思ったくらい【笑】それだけハルのギターが伸びやかに“歌って”いる証拠です。ええ、前田さんの声にも負けてません。
なので、歌詞つけてみました【爆】そのころ(高校生)作詞家の真似ごとみたいなことをしていて、当時のノートを引っ張り出してみたんですが、まぁ稚拙なこと。今ならもうちょっとましなフレーズを思いつきそうなものを・・・でも、それも青春の思い出ですね。
♪ Solid Sky (“Guiter Land” 1990) 
そんな店主の作詞魂が十数年ぶりに疼いた曲【爆】やはりTUBEに通じるポップな曲調で、まさにタイトルどおり澄み切った青空のイメージで。
ところでこの間奏(というのがギターソロに当てはまるのか)、これをちょっとテンポ上げてもう少しカッコよくしたら『夢の翼ひろげて』じゃないっすか!?14年かけてのサルベージ、ですか・・・。
♪ Straight to My Heart (“Color of Life” 1995)
これぞ春ソロ!というギターバラード。
春畑氏のギタープレイを一言でいうと「歌うようなギターサウンド」ですが、この曲では朗々と歌い上げています。シャウトしています。その辺が判ればTVで流れてきても「あっ、ハルだ!」と即座に反応できます。でもどの辺がどう、と理屈で説明はできませんが【笑】もう慣れ、ですね。
♪ Sparkling Heaven (“Real Time” 1993)
ギンギンのハードロック、なんだけどただギターをガチャガチャかき鳴らす、というのではなくメロディをちゃんと追えるのがハルのハルらしいところ、でしょうか。インストでもAメロ→サビ→Aメロ→サビ→リフレインと歌モノの構成をちゃんと踏まえてますし。
『Sparkling Heaven=光きらめく天国』というタイトルですが、ギンギンのギターサウンドから浮かんだイメージはむしろ暗闇に瞬く光、天国よりもそれに手が届きそうで届かない一歩手前、という印象です。
♪ 青いコンバーチブル (“Smile On Me” 1989)
TUBE的に分類するならば王道ポップ路線、というかこれは『ひとりTUBE』でしょう!爽やかなイメージがただようのはタイトルの「青」の字のせいだけじゃないはず。
♪ Silent Breath (“Real Time” 1993)
初めて聴いたとき、「これ『シティーハンター』のサントラに使えるんじゃない?」と思ってしまいました【爆】最近TUBEの曲をモチーフに妄想をふくらますことが多いのですが、ふくらますためのネタ元となる歌詞のないインストも、サウンドトラックとして使っちゃえ!というのがこのアルバムを買った隠された魂胆だったりします。
どの辺がシティーハンターっぽかったのか、というとヒップホップ調のクールなバックトラックと、ギターのメロディアスなサウンドとの絡み、なんじゃないでしょうか。その辺が大都会・新宿を舞台にしたハードボイルド(?)でありながら実はハートウォーミング(というか人情噺)なシテハンと相通じるところがあるのかも【笑】
♪ J's THEME (1992/“Real Time” 1993)
店主が初めて触れた春ソロでありギターインストでした。
Jリーグ開幕当時はまだサッカーファンじゃなかったですし、春畑さんがテーマ曲を演奏&前田さんが国家独唱、という情報も入ってきませんでしたから、思いっきり見逃してしまいました。ネットが普及してればこんなこともなかったのに・・・。
ところで『J's THEME』は今でもJリーグの公式テーマソングなんでしょうか?あれからもう10年以上・・・ワールドカップも開催し、そのたびに音楽業界の便乗商法でいろいろ曲が出されているうちに、すっかり『公式テーマソング』のバリューが落ちているような・・・せめてオフィシャルな場ででも使ってください【頼】
♪ Sunrise (“Dream Box” 1991)

春ソロではデビューアルバムの“Drivin'”からTUBEのカバーを収録してますが、これはもう、イントロ聞いただけで判りますでしょ。これでアンプにつないでないエレクトリックギターの音色が入ればもう『茅ヶ崎パイプライン』!
でもこのアルバム、“湘南”も91年ですが、その年の2月なんですよね。つまり『Sunrise』の方が先で、前田さんがそれに詞を付けたというわけ。でもついつい『口ずさんじゃうんですけどね、『茅ヶ崎パイプライン』【笑】
なので、歌モノにするにあたってどこをどう変えたか、なんてとこから聴いてみるのも結構面白いです。

♪ Mother Ship (“Moon” 1992)
“Moon”は月をモチーフにしたコンセプト色の強いアルバムでしたが、末尾を飾るのがこの壮大なスケールのバラード。
この『Mother Ship=母船』というのは月とも地球ともとれますが、
脳裏に浮かんだのは、美しい月/地球と、その下/上(上も下も、宇宙規模で考えれば大した違いはないですが)で繰り広げられる人間たちの、時に微笑ましい、時に愚かしい営み、そしてそれをあたたかく見守る『母なる星』。
切ない泣きのギターが胸を締め付けます。
♪ Silver Unicorn (“Red Bird” 2000)

『Straight to My Heart』『Mother Ship』などと並ぶ春ソロ・大バラード。タイトルの通り、たてがみをなびかせるユニコーンの姿が目に浮かぶようです。このスケール感でたった3分38秒というのが信じられません【爆】
そういったイメージは言葉(歌詞)で述べようとすれば嘘っぽくなってしまうんですが、インストだとそれが無いんですよね。歌詞が無いというのは一面ではハンデなのかもしれませんが、むしろ言葉には出来ないものを伝えられる分、インストの方がより大きな世界を表現できるのかもしれません。

♪ Wave Rush (“Real Time” 1993)

どこかで聞いたことがあるような・・・と思ったら、野外ライヴ(2006『B☆B☆Q』)の春ソロ・コーナーで演ってたんですね。確かに、数ある春ソロ・ナンバーの中で野外受けという点ではピッタリかも。
ギターと同じくらい、もしかしたらそれ以上に主張するホーン・セクション。これは生ブラスが4人も入る野外でこそ聴きたいでしょう!(ラッパの音大好き♪)

♪SPEED ST☆R (“Color of Life” 1995)

どちらかといえばメロディアスなナンバー中心の選曲となったこのアルバムの中で、最もハードロック色が強い一曲なんじゃないでしょうか。スポーツニュースのハイライトシーンで流れているのを聴いた方も多いはず。春ソロとスポーツってなんて相性がいいんでしょう♪
でもサビ(というのかな、インストで)は疾走感あふれるシンプルなフレーズ。この「判りやすいハードロック」がある意味でハル・ロックの持ち味の一つですね。
ちなみにあの「ガガガガガ」や「キュイ〜〜〜ン」という音は、おもちゃの光線銃を使ったそうです【笑】

♪ Dream Box (“Dream Box” 1991)

初めて聴いたのは“Moon”に収録されている16ビート・ヴァージョンだったんですが、聴いてて涙が出そうになったのを覚えております。まるでオルゴールのような、ファンタジックな世界。でもそれは手を伸ばせばふっと消えてしまう幻想、または帰りたくても帰れない子供の頃の想い出のような切なさが綺麗なメロディの中に込められていて・・・。
あれからもう十数年、初めて聴いたときの感激はまだこの胸から消えてませんでした。

♪ DRIVIN' (“Drivin'” 1987)

イントロからあまりの『カッチョよさ』に思わず苦笑、そしてリリース年を見て思わず納得【笑】『Solid Sky』もそうなんですが、キラキラピカピカ具合がまるでアニメのサントラ(決して「ドラマの」ではない)のようで・・・。
こういったキラキラ、ピカピカしたポジティヴさがもしかしたら初期春ソロの底流にあるものだったのかも。ロックギタリストのインスト、といったらもうちょっとハードでアグレッシヴなイメージがありましたが、むしろそういうのとは正反対な爽やかさが感じられてなりません。
もちろんそれは恣意的に選んだ曲から言えることであって、決して春ソロ全曲を聴いたわけではない店主の偏った意見かもしれませんが、でもこれがデビューアルバムの一曲目で、しかもタイトルチューンですよ。云わば春ソロの名刺代わりの曲。そこにこれからの方向性を見てもいいんじゃないでしょうか・・・。

♪ Next Season (2008)

EXCEL HUMANのCMで使われていた曲(ちなみに出演は前田氏のお友達の横尾要プロ)、春ソロの真骨頂といえるギターバラードの、2008年現在における集大成。ですが、いわゆるギター・大バラード【笑】とは違い、ギターのメロディが前面にでたシンプルな編成(なのかな?)だけど、雄大な景色が広がりますよ、ギター一本だけで。これこそがハルのギターが到達した極致、でしょう♪

以前に前ソロ・ベストでも同じようにレヴューしましたが、前ソロは「ポジティヴ前田/シニカル前田」というような、云わばTUBEでできないものを実現する場でしたが、春ソロはむしろTUBEの延長上というか、TUBEとソロワークの区別というのはソングメイカー・春畑道哉の中で区別は無いんじゃないか、というのが店主の感想でした。今回の選曲は特にオーセンティックな、『企画モノ』ではない『王道』な曲を中心にしたものだったからかもしれませんが、そこにあったのはポジティヴなメロディの8ビートであり大バラードであり親しみやすいハードロックでしたから。
だとしたらTUBEサウンドを決定づけるのは前田氏の圧倒的なヴォーカル!という店主の前田さんびいきを改めなければならないのかも。店主が思っていた以上に春畑さんのメロディの力、というのが大きいのかもしれません。絵で喩えるのならば、ハルの決めた構図の上に前田さんが色を重ねていくというか(色彩は画家の個性を決める上で大きなポイントですよね)もちろんそこには角野さんの自己主張するベースや、それらを陰でしっかり支えるリョージのドラムも欠かせませんが。
だとしたらもっとコンポーザー・春畑道哉が評価されてもいいはず!
初回限定版のボーナストラックではTUBEの名曲をアコースティックなインストでカバーしてますが、まるでドラマのBGMっぽく聞こえましたもん(30分ごろ、その回一番の感動シーンで流れる主題歌のピアノアレンジ・笑)今までお芝居に曲を提供したことはありますが(このアルバムにも数曲収録)本格的にドラマや映画の劇伴でハルソロを聴いてみたいな♪そういう制約のある仕事は好きではないかもしれませんが、是非に!


Coming out!