A Working Man

「僚、時間だ。そろそろ行くぞ。」

「ああ、分かった。」

僚が返事をすると海坊主は病室のドアを閉めた。


“‥‥ったく。こんな時に仕事なんかする気分じゃねえよ。”

今回の仕事は少々厄介で、僚は海坊主の力を借りることにしたのだった。

病室のベッドに座る香とその腕に抱かれた小さな存在に、僚は穏やかな目を向ける。

「じゃあ、行って来る。香、何かあったら、すぐにナースコールで看護師さん呼ぶんだぞ。いいな。」

「うん。私は大丈夫だから。僚の方こそ気をつけて。」

「ああ。」

香は優しく送り出してくれるが、香の顔を見ると、余計、仕事に行きたくなくなる。

“ やっぱり、今回の仕事は、全部、海ちゃんに任せよう‥‥!”

なんて考えたりもするが、そんなこと出来る訳が無く、“ 仕方ない ” と、僚は諦めて仕事に行くことにした。

「おっと、こっちのお姫様にも行って来ますをしないと。」

ちょっと触ったら壊れてしまいそうな、小さな小さな我が子。僚は少し膝をかがめて顔を近付ける。

「パパ、お仕事に行ってきましゅからね〜!」

緩んだ顔で愛しき我が娘に語りかけると、次は再び香の顔を見つめ、唇を重ねた。

「これは、“ 行ってきますのちゅう ”‥‥だ。」

僚の突然の言動に、香は驚きを隠せなかったが、すぐに穏やかな表情に戻ると

「行ってらっしゃい。早く帰って来てね。」

「おう!こんな仕事、さっさと片付けてくるぜ。香、コイツと2人でおとなしく待ってろよ。」

まるで新婚夫婦のような会話をした後、僚は名残惜しそうに病室を跡にした。



そして数時間後‥‥

僚が猛スピードで仕事をこなし、最愛のパートナーと娘がいる病室に戻って来たのは言うまでもなく、バタンと勢いよく病室のドアを開けると、香の腕の中でスヤスヤ眠る我が子と香に飛び付いたそうな。




Fin


サエバスキーさん、ごめんなさい‥‥m(._.)m

以下、言い訳です。

『 Precious Heart 』 を書き始めた頃、反動で、明るくて甘めの話を書きたくなり、突発的に書いたお話です。 Baby が登場して、驚いた方がいたらすみません。

Babyは生後3日くらいの設定で、“ 生まれたばかりの我が子とカオリンにメロメロな僚ちゃん ” が主役です。

タイトルは、かなり適当 (殴) 話は相変わらず短いです。


in memoriam